第16話 剣奴

 
灰色の惑星には、競技場のような建物が立ち並んでいた。
俺は広場にファルコン号を着陸させた。
そこでは、二人の上半身裸の男が剣(光線剣じゃない、金属製の剣だ)を交えている。
唐突な出来事に面食らっている間に片方の男が倒された。
歓声が上がる。
すると、建物から男が出てきて、生き残った方と戦い始めた。
戦いが始まる。
一人が倒れる。
歓声。
新手が出てくる。
飲み込めた。ここは惑星全体が剣奴が戦う闘技場なのだ。
「それは違う」
テレパシーが響く。誰だろう。
見回すと、建物の窓から手を振っている老人がいる。テレパシーが続く。
ここは銀河の凶悪な犯罪者を閉じ込めておく囚人惑星。
十人を決闘で倒すとネロから永遠の時間パワーを与えられるという。
ネロ! ここにもネロの手が。しかしこの老人はいったい?
「わしはネロによってここに閉じ込められたのじゃ」
すると、この老人が<時間の殿堂>の管理者、<時の老人>!
助け出そうと建物に向かって走る。立ちはだかる影がひとつ。
見るからに他の剣士とは格が違う。
そう、彼こそがかの有名なスパルタクスだ。もう何でもありだ。
この手の輩に超能力で戦ってもすぐに復活されてしまう。
ここはやはり時間パワーだ。



時間パワーでの激しい戦いに勝利した俺は、時の老人を助け出した。
<時間の殿堂>のある<放浪星>の座標は、さらわれてからだいぶ時間が経ってしまったのでわからなかった。使えない。
ただ、<放浪星>はさかさま時間に包まれているという。
「放浪星を見つけたと思っても用心することじゃ。わかったら行け」
えらそうなじじいだ。言われなくても行くさ。
 
足手まといになるからこの星に残るという時の老人を置いて、俺はヒヤデスの中心に向かってファルコン号を進めた。
ヒヤデスの重力と磁気のアリ地獄がファルコン号を襲う。
最初のうちはかわしていたが、とうとう計器が狂い始める。
と、同時にある方向へ一直線に引っ張られる。
行き着いた先は、宇宙のサルガッソ海
脱出不可能といわれる宇宙船の墓場だ。