第15話 黒の惑星〜ネロ皇帝

 
俺はリリパット星へ向かうために、銀河中心部のヒヤデス散開星団へ向かった。
400個ほどの星の集団で、誕生してから10億年たつと書いてあるが、例によって本当は200個・7億年であった。
この重力場の地獄に、真っ黒な惑星を発見した。
あやしい。しかし虎穴にいらずんば何とやらで、その星に着陸することにした。
黒の惑星の地表は見渡す限り真っ黒で、表面は磨き上げられた鋼鉄のように黒光りしていた。
テレパシーで探査したが、周囲に生物はいないようだ。
仕方ないので出発しようと思ったその時、こちらに向かって静かに歩んでくる十人ほどの女性の一団が見えた。黒い肌に黒い布をギリシャ風に巻きつけている。
いい女だ。俺に向かってついてくるよう手招きしていた。
据え膳食わぬはなんとやらで、俺はついていくことにした。
しばらく歩くと、やはり真っ黒なパルテノン神殿のようなところにたどりついた。
神殿の中に入ると頭に王冠を載せた類稀な美女が俺を待っていた。
ミロのビーナスだ、いや黒い肌をしているからクロのビーナスだなどと考えていると(と本文には書いてあるが、もちろんそんなことは考えていない)美女が話しかけてきた。
 
彼女は俺が光の子だと知っていたようだ。銀河一の勇者である俺様をもてなしてくれるというので、ご相伴に預かることにした。先ほどの女性たちはこの美女の侍女のようだ。テーブルにつくと料理が運ばれてくる。黒い器に黒酒、黒鴨、黒豚の肉、黒核*1、黒鯛、黒つぐみ、そして黒パン。何かの冗談だろうか。
そういえば、名前を聞いていなかった。
「アグリッピナと申します」
 



 
うおお、ネロの母親じゃないか!!!!!
息子を帝位につけるために毒を塗った鵞鳥の羽で自分の夫の喉を刺した悪女だ。
アグリッピナは侍女たちとともに毒を塗った短剣で襲い掛かってきた。
侍女たちをテレパシーで戦おうとするが、まったく効かない!
そう、侍女たちはロボット*2だったのだ。道理で最初にテレパシーで探査したときに気づかなかったわけだ。
仕方ないのでサイコキネシスで引きちぎった。作り物とはいえ女性に手を上げるのは気分の良いものではないな。
黒の侍女たちを倒し、アグリッピナを追い詰める。
ネロから無限の時間パワーを得ている彼女に超能力は効かない。ここは魔数で勝負だ!
 
死闘の末(と言ってもサイコロ一回振るだけだが)アグリッピナを倒した。彼女から時間パワーを吸収し、さらなるパワーアップを遂げた。そう、サイコキネシスがついに20点に!
もう負ける気しないぜ。馬場、猪木ドンと来い!
そのとき、神殿の奥で人影が動いた!
その影を追いかける。その男は祭壇の前で俺を待ち構えていた。
悪魔の絵の入った胸当てに黒いマント。
全身から黒い光(ブラックオーラ)を発し、怒りの形相でこちらを睨んでいる。
今までの敵とは違う、圧倒的な存在感。
一目見てわかった。こいつが<闇の子ネロ>だ。
「おのれ、銀河霊の犬め。何が光の子だ。わが母を殺しおって!! こうしてくれる」
ネロは全身を包んでいたオーラをこちらに放ってきた!
<黄金の十字架>を持たない俺には避ける術が無い。
一瞬で全身を黒い光に包まれ、昏倒する。
体から時間パワーが抜けていく。
まさかこんなところにネロが来ているとは…。
薄れ行く意識の中で、俺は<光の剣>と<タイムカメラ>に手を伸ばした。
神器から、俺にパワーが注ぎ込まれる! 最後の気力を振り絞って、俺は逃げた。
 



 
気がつくと、ファルコン号のコクピットの中にいた。
ハル1が、現在ヒヤデス星団に到着した事を教えてくれた。
タイムカメラの力か銀河霊の加護か、どうやら数時間前に戻されたらしい。
俺は罠の待つ黒い惑星を避け、次に現れた灰色の惑星へと向かった。

*1:ふりがなは<くろざね>。いまだになんだかわかりません。ご存知の方はお知らせください。

*2:ロボトイドという、らしい