その1 「焼死」

 
舞台は海岸に建てられた中規模のリゾートホテル「国際中央ホテル」。冬。
川岸常務*1は防火管理講習でまたビル火災のビデオを見せられてうんざりしていた。
そんな中、ホテルに老人会のバスが到着する。
親切な中年バスガイド田沢さんにちょっとときめく川岸常務。老いらくの恋は成就するのか!?
 
そんななか、「適」マーク*2を気にする客、益田さんが来た。
俺は、すっかりそんなものの存在を忘れていた*3
 
俺は客室係に益田さんの案内を頼んだ。
益田さんはこのホテルの迷路のような構造に辟易していた。
ようやく部屋に着いた二人。客室係はさっさと帰ってきた。
そう、客室係は益田さんに避難口の場所を教えるのを忘れてしまったのだ*4
しかし、用心深い益田さんは部屋に入る前にすかさず避難口をチェックしていた。やるな益田。
 
そういえば、俺は旅館に泊まるとき避難口を確かめるだろうか?
ここで運試し。*5



…数日後、俺達4人は社員旅行に行った。
俺達は、度重なる増改築で複雑な構造になっている旅館をうろうろしていた。
うちとあんまり変わらんな、どこも。
俺は、部屋に着くなりさっさと大浴場に向かった。
他の人は部屋に残った。
これが運命の分かれ道だった。
 
真夜中、怒鳴り声で目が覚めた。
「火事だ!」
俺はとっさに廊下に駆け出した!
あとの3人はなんと窓から飛び出した!
 
何!?
 
そう。ここは一階だったのだ。
俺はすぐ風呂に行ったので気づかなかったが、部屋に残った人は窓の外を見ていたのだ。
あわてて引き返そうとするも火の手は強く、俺は炎に包まれたのだった…。*6

*1:総務担当、防火管理者

*2:立ち入り検査で合格するともらえる、防火の安全マーク

*3:減点10

*4:減点10

*5:ついにダイスを振る瞬間が!

*6:この場面は、昭和43年11月、有馬温泉で起きた実際の火災を元にしている。